憧れ
Sehnsucht

z.B. 君はわがやすらい D.776
   ただ憧れを知るひとだけが D.887-4
   『白鳥の歌』

 憧れを知る者のみが、
 わが悲しみを知る。
 ひとり、ただひとり、
 なべての喜びを絶たれ、
 ひたすらみ空に、
 遠きかなたに見いる。
 われを愛し、われを知る者は、
 遠くにあり。
 眼くらみ、
 胸うちは燃ゆ。
 憧れを知る者のみが、
 わが悲しみを知る。 (ミニョン)

 「憧れ」は幸せももたらしますが、同時に「悲しみ」も内包しています。この微妙なニュアンスをもつ「憧れ、Sehnsucht」はドイツリートの最頻出単語です。
 シューベルトも様々な憧れを歌っています。
 『君はわがやすらい』では、「憧れ」はやすらいの中に鎮められ、悩みなく、静かで神々しい静けさに包まれます。
 『白鳥の歌』中の『春のあこがれ』では、「憩うまもない憧れ!こがれやまぬ胸よ、つねにただ涙、ただ嘆き、ただ悩みのみ!」と、憧れのもつ衝動と渇望が描かれています。「憧れ」の心をコントロールすることは至難の業です。
 「憧れ」はしかし、死の直前に書かれた『白鳥の歌』の「遠い地にて In der Ferne」で完全に葬り去られてしまいます。