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octobre. 2004


Wilhelmのお気に入り

Schubert spielt auf わすれな草

J.デムス(フォルテピアノ) 

 デムスが、知られざるシューベルト「"Vergissmeinnicht"わすれな草」と題して日本で録音した知られざるCD。先日家に遊びに来たまいさんが忘れていったものです。
 ローゼンベルガーという1830年のピアノがすこぶるいい音をたてています。デムスは時に「針が飛んだかな」と思わせるような思い切ったアゴーギクを効かせ、またそれが自然でシューベルトの生の姿を伝えてくれます。
 気楽なシューベルトの小品が並べられたCDですが、初っぱなの"12 Erste Walzer"からして、そのなんとも気持ちのいい優しいシューベルトの心に引きこまれ、このディスクを聴いていると夢見心地に時間が過ぎ去ってゆきます。(DEMUSICA58)


septembre. 2004


Wilhelmのお気に入り

R.Schumann
リーダークライス 作品24

I.ボストリッジ、J.ドレイク 

 幾多の困難を乗り越えクララとの生活を手に入れたシューマン。結婚の数ヶ月前から歌曲の創作に没頭するわけですが、ハイネの詩はシューマンのファンタジーを大いにくすぐったようで、特に『リーダークライス』作品24は、『詩人の恋』と並ぶ偉大な環歌曲になっています。ハイネはここでも単に夢や憧れを歌うだけではなく、女性の冷酷さや報われない愛を歌っていますが、シューマンは実にほどよくのぼせていて、ハイネのいわんとするところをうまい具合に避けつつ筆を進めているように見えます。
 絶品『山と城が見おろしている』では最終節でハイネの皮肉が爆発していますが、シューマンはあたかも気がつかないがごとき。シューベルトならば相当劇的に処理したのではないでしょうか。
 それにしても「歌を呪縛した魔法の力は消え去り」(最終曲の最終節)の「魔法」の部分の和音の色香などを耳にすると、和音の種類のパレットが豊かになったこの1840年という時代がうらやましく思えます。


August. 2004


Wilhelmのお気に入り

R.Schumann
ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44

シューマン・アンサンブル 

 シューベルトに対する気持と同じ心でシューマンにはまっています。
 先日、『イザベル・アジャーニの惑い』という映画を見ました。BGMとして使われていた音楽はシューマン、ピアノ五重奏曲の第二楽章のみ。何度もこの楽章の冒頭と、中間部のハ長調のテーマが流れ映画の雰囲気をつくりだしていました。『イザベル・アジャーニの惑い』は心の底に沈むような深い印象をこの音楽と共に残しました。
 ここに掲載したディスクはW.ブロンズを中心としたオランダの演奏家が組織しているシューマン・アンサンブルによるものです。いい演奏です。


Juli. 2004


Wilhelmのお気に入り

ピアノソナタ ト長調 D.894
ピアノソナタ 変ロ長調 D.960

Joerg Demus フォルテピアノ 

 Schubert Institutで最も愛されている2曲。
 デムスは深刻になりすぎず、程良い距離を置いて演奏しています。それが返って曲のもつ本来の良さを表現しているように思います。シューベルト時代のピアノもとても良い響きをきかせています。


Juni. 2004


Wilhelmのお気に入り

リスト編曲
セレナード「聞け!聞け!ひばりよ」

Ignaz Friedman ピアノ 

 リストはシューベルトの歌曲をピアノ独奏用に、また管弦楽と歌という編成に、膨大な量の編曲を行っています。
 リストにとってメロディーを生み出す、というのは難しい技でした。シューベルトの無尽蔵に湧き出る楽想がうらやましく、あやかりたいという気持ちがあったのではないでしょうか。
 それにしてもさすがにリスト、原曲に華麗さと味わいを加え、なかなか聴き応えのある小品に仕上がっています。
 イグナーツ・フリードマンというピアニストはご存知でしょうか。NatalieとWilhelmが心酔している20世紀最高のピアニストです。


Mai. 2004


Wilhelmのお気に入り

ピアノ三重奏曲 第1番 変ロ長調

Jacques Thibaud
Pablo Casals
Alfred Cortot
 

 よくぞこの3人でトリオを組んでくれた。精悍ないい男たち!20世紀の生んだ最高の組み合わせによるシューベルトのトリオ。1926年の録音。
 ポルタメントを存分に効かせながら歌よりも濃い表情をみせる弦楽器。クールでエスプリの効いたコルトーのピアノ。
 第2楽章"Andante un poco mosso"はシューベルトも予想だにしなかった世界、空前絶後の宇宙の気脈に通じる演奏です。もうたまりません。


April. 2004


Franzのお気に入り

『冬の旅』
Ch.プレガルディエン(歌)、A.シュタイアー(ピアノ)

 起伏に富んだドラマティックな「冬の旅」。フォルテピアノのシュタイアーも伴奏の域をはるかに越え、全ての音に意味を込めます。プレガルディエンの声は、絶望感を表す迫真に迫ったもの。この作品の真の意味を伝えてくれる特別に優れたディスクです。
WPCS-21243


Wilhelmのお気に入り

ミサ曲 第5番 変イ長調 D.678
Ph.ヘレヴェッヘ(指揮)
RIAS室内合唱団、シャンゼリゼ管弦楽団

 速筆で有名なシューベルトが、3年もの歳月を経て書き上げた大規模なミサ曲。
 各曲が異なる調性で書かれているなど各所に工夫がなされています。グローリアの最後に置かれた本格的なフーガを見ても、いかに気合いの入ったものかが分かります。
 感覚的にも優れていて、冒頭のクラリネットとファゴットのとろけるような甘い響き、サンクトゥス冒頭の万華鏡のごとく調性を変えてゆくところはうっとりとするばかり。モーツァルトの「レクイエム」や「ミサ曲ハ短調」の足下にも及ぶ傑作といえるでしょう。
 ヘレヴェッヘはこの曲の美点をあますところなく伝える優れた演奏を残してくれました。
HMC 901786


Marz. 2004


Wilhelmのお気に入り

即興曲集
K.エンゲル(ピアノ)

 名盤を見つけました。それでまた即興曲です。
 Natalieが子供の時に買い求めたレコードが棚の中から出てきたのです。
 K.エンゲルといえば、リートの伴奏ピアニストかな、ぐらいに思っていましたが、この即興曲集はかなりな名盤です。
 歌いすぎて溺れることのない推進力を伴ったテンポ感。決して跳ねはしないが常に内在するリズム。がなりたてることのない懐の深い表情。活力がありながら静かで落ち着きがあり、聴く者をとてもよい気持ちにさせてくれます。
 作品90の第3曲アンダンテは、ソプラノが静かに旋律を奏で、内声は分散和音、バスは内面の気持ちを表現しているという、演奏バランスがとても微妙な作品ですが、ここではそれらが理想的に表現されています。


Februar. 2004


Wilhelmのお気に入り

弦楽四重奏曲 イ短調 D 804「ロザムンデ」
弦楽四重奏曲 変ホ長調 D 87
四重奏曲楽章 ハ短調 D 703
ハーゲン四重奏団 1986年

 女性に想いを告白できないような青い季節。表面的には快活で萌え出ずるエネルギーがありながら、その心をコントロールできず悶々とさまよい歩く痛々しい姿。青年期に伴う青臭さ、満ち足りなさ、やるせなさ。こういったシューベルトならではの複雑な感情が若い弦楽四重奏団により奇跡的に表現されているディスクです。
419 171-2 GH


Januar. 2004


Wilhelmのお気に入り

ピアノソナタ集 Vol.2
ソナタ 第3番 ホ長調、第15番 イ短調、第8番 嬰ヘ短調、第16番 ニ長調、第4番 イ短調、第17番 ト長調
P.バドゥラ-スコダ フォルテピアノ

 1810年製シェフトス、1823年と1826年製のグラーフと3台のウィーン式アクションのフォルテピアノを用いて録音された3枚組のソナタ集。
 第8番嬰ヘ短調は未完の作品で、マイナーな存在ですが、シューベルトならではのロマンティックでナイーブな心の声が聴ける、愛すべき作品です。
 スコダは現代的に洗練されたテクニックの持ち主ではないだけに、かえってその演奏にはシューベルトを彷彿とさせるものがあります。詩情豊かな表情が素敵です。
 ピアノに内蔵されているトルコ式打楽器が炸裂したり、ウィーン式フォルテピアノの音にも魅せられる価値あるディスクです。
ARCANA A 409


Dezember. 2003


Wilhelmのお気に入り

ピアノ作品集 Vol.1
メヌエット、ワルツ、エコセーズ、レントラー、スケルツォ
T.レオンハルト フォルテピアノ

 シューベルティアーデの楽しい集いが目に浮かぶような、気持ちのよいディスク。
 ワルツ、エコセーズなど、当時ウィーンで流行っていた踊りが収められています。仲間たちと踊るためにシューベルトがつくった実用的な音楽です。
 "Adagio in E, D.612"は、晩秋の夕映えの中を寝ころびながら空を見上げているような、郷愁をそそるいとも美しい作品。一音一音が心に染みわたります。
シューベルト時代のフォルテピアノの音もいい感じ。
GLOBE GLO 5151


November. 2003


Wilhelmのお気に入り

歌曲集 エリー・アーメリング 
D.ボールドウィン、R.ヤンセン(ピアノ)

 このページでは、意識して男の視点からシューベルトの姿を追っていますが、こうした、女性に焦がれる側面からばかりでは、シューベルトの全体像を捉えることはできません。女性の声のシューベルトを今月は楽しみたいと思います。
 シューベルトのリートは決して男だけのものではなく、「アヴェ・マリア」「恋する女の手紙」など、純真な女性の心も取り上げられています。「糸を紡ぐグレートヒェン」や、「ミニョン」の歌は男が歌うと変ですし、「男はろくでなし」なんていう歌もあります。
 また、男からの恋の歌でも、「リュートに寄せて」や「愛の歌」などは、女性の繊細で愛らしい声で歌われた方がずっとよいですし、「音楽に寄せて」や「沈みゆく太陽に」など性を選ばない普遍的な作品も数多くあります。
 イエルク・デムスと共演した、このディスクより若い時のアーメリングの方がより好感が持てますが、伸びやかでひたすら美しい彼女の声は、どの共演者とでも魅力的です。


Oktober. 2003


Wilhelmのお気に入り

『歌曲集 Volume 2』
イアン・ボストリッジ(歌)、ジュリアス・ドレイク(ピアノ)

 本来リートは、ごく私的な空間で歌われたものでしょう。「大声で堂々と愛の言葉を叫ばれてもな〜」と、オペラ的な歌い方をする歌手にはいつも疑問符がついていたものですが、ボストリッジはさまざまな声で、陶酔の世界へ誘ってくれます。愛する女性の耳元でささやくように歌う彼の歌声に心が染みます。
 かず君も、ボストリッジを初めて聴いたときに「自分もホモになってもいい」と感じたそうです。確かにそう思わせる、同性をも甘くとろけさせるようなところが彼の歌にはあります。
 ピアノもいわゆる伴奏の枠内におさまらない、意欲的な音楽を奏でていて、歌手との緊張関係がすばらしいです。
 「冬の旅」日本公演を聴いたかず君によると、決して小さな声ではなく、とてもよく会場の隅々まで届くのだそうです。また来日してください。


Heinrichのお気に入り

ムラヴィンスキー指揮の、「未完成」。Schubertの美しい旋律が、戦慄を伴って、Objetのように並べられていく美しさは、おそろしくさえあります。
Franzさんのお言葉をお借りすれば「存在しているだけで美しい」Schubertの本質、ここに極まれり、といった感じなのですが。


September. 2003


Franzのお気に入り

ピアノソナタ ト長調 D.894
3つのクラヴィーア小品 D.946
アレグロ ハ短調 D.915
ピアノ:W.ブロンズ

 商業主義にまみれた、売れ筋ディスクからは、なかなかシューベルトの生の声を聞くことができないと感じています。シューベルト自身、地位や名声とは縁の遠い生活を送っていました。
 オランダ人ピアニスト、ヴィレム・ブロンズは、シューベルトの心の声をとらえた優れた録音を残しています。ピアノがハンマーで弦を叩いて音をだす機構をもつ、ということを忘れさせる、空中に漂うような美しい音色。シューベルトに限りない共感を寄せるピアニストにより、シューベルトの世界が深められてゆきます。
 「日本クラウン株式会社」により奈良で1993年に録音されたものです。
CRCC-26


Wilhelmのお気に入り

『即興曲』
ピアノ:A.シュナーベル

 我らの心の顧問、喜多尾道冬さんは、『即興曲』について、
「現実と非現実、理性と狂気とが入り乱れる、一種の美の惑乱状態。」「現実に踏み止まるか、美の惑乱の世界に溺れてゆくかという緊張した内面のドラマが隠されている。」と述べられています。
 表面的には大変美しいメロディーが紡がれてゆく8曲の即興曲ですが、その内面にはただならぬ葛藤が隠されています。
 D.935の第1曲目ヘ短調の即興曲。絶望的な下行音型に導かれ現れるのは、不安感をさそう16分音符の揺らめき、ユニゾンで激しくたたきつけられた後に現れる、変イ長調の美しいレガートの主題には、幻惑の効果があります。
 私はシューナーベルの『即興曲』を愛聴しています。


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